タイでリチウム鉱床発見 埋蔵量約1500万トン、世界3位規模

タイレポート
Akihiro Komuro
小室 明大

タイ政府は1月19日、大規模なリチウム鉱床が見つかったと発表した。埋蔵量は約1500万トンで、ボリビアとアルゼンチンに次ぎ世界3位規模となる。鉱床は南部パンガー県内の2か所で見つかり、推定埋蔵量は1480万トンだと明らかにした。ただし、「発見した資源のうちどれだけ利用できるか調査中だ。判明には時間がかかる」と説明している。タイは従来型の車の組み立てで培った経験を生かし、東南アジアにおけるEV生産の中心地になることに意欲を示しており、今回のリチウム鉱床の発見は、その目標達成に向け弾みをつけるものとなる。

出典: AFPBB

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ホンダ、量産EV「Honda e」の生産終了へ 販売低迷で

日本レポート

ホンダはHonda eの生産を2024年1月までに終了する。同社にとって量産型では初となるEVだが、年間1,000台の国内販売目標を下回り、売れ行きが低迷していた。今後は2024年春に発売する商用の軽EVなどに注力し、販売車両の電動化比率を高める。

Honda eは2020年に発売した。現在販売中の車両価格は495万円で、航続距離は259キロメートル(WLTCモード)。すでに欧州での販売を終了している。国内でも在庫がなくなり次第、販売を終了するという。

Honda eはもともと台数を稼ぐモデルではなかったが、販売目標を達成できなかった。今後は来年以降に発売する軽EV、N-VAN e:などを皮切りに、車種を拡充していく。

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現代自とアップル、自動運転EVで提携へ

韓国レポート
Akihiro Komuro
小室 明大

韓国の現代自動車と米アップルは自動運転EV分野での提携で正式合意する予定だ。韓国紙コリアITニュースが伝えた。先週、現代自とアップルが2027年に自動運転EVの発表を目指していると別のメディアが報道。これを受け、現代自はアップルと初期段階の協議をしていると発表していた。現代自は10日、コリアITニュースの報道についてコメントを拒否した上で、自動運転EVの開発で様々な企業から協力を念頭とした要請を受けているとする8日の説明を繰り返した。アップルのコメントは現時点で得られていない。

参考: REUTERS

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クボタと住友建機 建設機械の相互供給の検討を開始

日本レポート
Akihiro Komuro
小室 明大

クボタと住友建機は10月31日、建設機械の相互供給に関する具体的な検討を開始したと発表した。

世界各国では、人口増加に伴う住宅需要の拡大、インフラ投資や都市開発に伴う工事の増加が見込まれていることに加え、建設工事における人手不足が深刻化していることから、効率化や省人化に向けて、建設機械の旺盛な需要が見込まれている。

クボタは市街地の建設工事などに使用される小型の建設機械、住友建機は幅広い土木工事や林業などにも使用される中・大型の建設機械に特化し、製品の開発・生産・販売を行っている。両社ともそれぞれの製品における、省燃費・高い操作性などを実現するための技術開発力やICTを活用したソリューションに強みがある。その一方で、工事現場では多様なサイズの建設機械が求められているが、現状の製品ラインアップでは顧客のニーズに応えていないという問題を両社が抱えており、製品ラインアップの拡充が重要な経営課題の一つとなっている。

クボタは、市街地の工事現場で使用されることの多く、海外での顧客のニーズが高い、14t油圧ショベルを住友建機から供給を受けることを検討する。住友建機は、海外向けにクボタの小型機種の供給を受けることを検討する。

参考: クボタニュースリリース

PSR 分析: お互いの商品ラインアップを補完し、不足している要素を補うための2社間の協業は他のセグメントでも徐々に見る機会が増えている。ニュースリリースでも説明されている通り、クボタと住友建機はそれぞれ異なる製品を持っており、ターゲット顧客も異なるために、製品が競合しないという状況は協業する上で好ましい。正式な協業契約の締結には価格の折り合いがつくかどうかが最大の焦点になるだろうが、筆者はこの検討は成立する可能性が極めて高いと見ている。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

現代自動車、産油国にEVを売る…市場先取り戦略

韓国レポート

現代自動車が中東のEV市場の開拓に乗り出した。大規模な投資で市場の先取りに乗り出す戦略だ。世界的な二酸化炭素削減の動きを受け、産油国の中東諸国でもEV市場への関心は高い。現地での自動車生産に加え、エコ水素エネルギーなどにも事業を拡大している現代自動車は10月22日、サウジ国富ファンドと半製品組立工場設立のための合弁投資契約を締結。キングアブドラ経済都市に年間5万台を生産できる合弁工場を建設する。

合弁工場は2024年上半期着工、2026年上半期生産開始を目標にEVと普通車の両方を生産する。現代自動車はここを中東や北アフリカ地域の中心生産拠点としたい考えだ。

また、サウジでEVメーカーとしての地位を強固にすれば、周辺中東地域への進出の足掛かりになる。ハーリド・アル・ファーレフ投資相は2030年までにサウジを年産50万台規模のEV製造ハブにするという青写真を明らかにしている。

参考: KOREA WAVE

PSR 分析: サウジアラビアは中東地域におけるEV産業の中心になろうとしている。9月には米国の新興EVメーカーであるLUCIDグループがジッダに初の海外工場を開設したと発表したばかりだ。LUCIDの株式の60%を保有するのはサウジアラビアの政府系ファンドである。テスラもサウジでも製造工業建設について初期段階での協議を行っている。個々で何度も指摘しているように、現代自は中国以外の市場開拓に非常に積極的で、特に米国ジョージア州への投資は大きく、複数の部品サプライヤーとともに進出し、現地生産のサプライチェーンを構築しようとしている。今回のサウジへの投資が実り収穫時期を迎えるにはしばらく時間がかかるかもしれないが、先行投資を期待していることは明らかだ。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

中国の車設備企業、タイにEVバイク工場 420億円投資

タイレポート

タイ東部の経済特区「東部経済回廊(EEC)」の事務局は7日、自動車設備などを手がける中国の蘇州瀚川智能科技がタイに電動二輪(EVバイク)の新工場を設けると発表した。2028年までに総額100億バーツ(約420億円)を投じ、年15万台の生産能力を確保する。

瀚川智能の幹部がEEC事務局との会談で明らかにした。EEC域内にあるタイ東部チョンブリ県の産業団地に工場を建設し、EVバイクの組み立て、交換式電池や充電設備の製造などを始める。稼働時期は明らかにしていない。

瀚川智能は07年に創業。自動車業界向けの生産設備などを手がけており、中国の大手自動車メーカーや部品メーカーと取引がある。上海証券取引所のハイテク新興企業向け市場「科創板」に上場しており、22年12月期の売上高は前の期比51%増の11億4280万元(約240億円)、純利益は同21%増の約7351万元だった。

足元でタイの新車販売に占めるEVバイクの比率は高くないが、政府は23年11月時点でEVバイクの購入代金を最大1万8000バーツ支給するなどして市場拡大を図っている。国営エネルギー大手のタイ石油公社(PTT)が8月、台湾二輪大手の光陽工業(キムコ)とEVバイクの生産に乗り出すと発表するなど動きが活発化している。

出典: 日経

PSR 分析: 東南アジア上記の記事でも触れられているようにタイにおけるEVバイクの普及はまだまだこれからという状況だが、この時点で年産15万台規模の生産設備への投資額は非常に大きい。これは単なるタイ市場に留まらず、近隣諸国への輸出をも視野に入れているのではないかと筆者は予測する。

中国で発表される投資プロジェクトと、現実的に遂行されるプロジェクトのディテールに乖離があるケースは多いため、実際にこれらがどのように進められていくのかはチェックが必要だが、いずれにしろ、現時点で世界最大のEVバイクの生産能力を持つ中国が、世界最大の市場のひとつである東南アジアのバイク市場に目を向けるのはごく自然な流れだろう。過去にもエンジンモデルで中国OEMが東南アジアへの市場参入を試みた際には、品質的に大きな問題がありうまくいかなかった。四輪とともに日系OEMの牙城ともいえるタイ二輪市場で中国メーカーがどう立ち振る舞うか注視していく。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

マレーシア・プロトン、タイにEV工場建設を検討

マレーシアレポート
Akihiro Komuro
小室 明大

タイの首相はマレーシアの国民車メーカー、プロトンがタイでEV工場の建設を検討していることを明らかにした。タイ政府はかねて関連産業の育成に力を入れている。

タイの首相は訪問先のマレーシアの首相との共同記者会見で、「工場誘致の明確なステップを確認し、迅速に進められるよう期待している」と述べ、近く関係者らと詳細を詰める方針を示した。投資額や生産能力などは明らかにしていない。

プロトンはマレーシアの自動車産業を興すために国策として1983年に設立された。現在は中国の民営自動車大手のGeelyから出資を受けて、EVへのシフトを急いでいる。

タイ政府は2024年からの現地生産を条件に、価格が200万バーツ(約55,000ドル)以下のEVに最大15万バーツ(約4,100ドル)の補助金を支給するなど、EV工場の誘致に取り組んでいる。 タイのEV産業では中国メーカーの存在感が大きい。BYDがタイのEV販売台数で3割を占め、東部ラヨーン県にEV工場の建設を計画する。SAIC MotorやGWMも現地生産を予定している。

出典: 日経

PSR 分析: 東南アジアの多くの国では自動車産業を自国の製造業の柱と位置づけ、外資からの投資を募ってきたことは周知の事実だが、そうした投資の多くは日本からのものが多かった。一部の国や地域における日本車のシェアは今でも非常に高い。欧州や米国は位置的にも遠く、現地のサプライチェーンの構築や販売を含めたネットワークを構築するための時間とコストの観点から、一歩引いて観察してきた様相だ。だがそうした市場に中国が進出して積極的な投資を行っていることに対して、懸念を表す意見もある。東南アジアは日本や米国の自由主義国と中国の統制主義のどちらを取るのか、と問われている、というような見方だ。だが、現実はそうしたシンプルなものではない。ベトナムのVINFASTが好例なように、東南アジア各国は自国ブランドに対して強い思いがある。経済発展の象徴となり得るからだ。プロトンは浮き沈みを繰り返しながらも成功し、マレーシアでは一定のシェアを保っている。EVシフトの波にうまく適応できれば、プロトンが東南アジアにおける自動車産業王国であるタイで一定の成功を収める可能性は充分にある。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

コマツ、Hondaと共同開発した電動マイクロショベル「PC05E-1」を10月より国内で発売

日本レポート

コマツはHondaと共同開発した電動マイクロショベル「PC05E-1」を10月より国内市場で発売すると発表した。電動化市場がまだ形成されていない国内の建設機械市場において、多様な機種を導入し顧客のニーズに応えることで2050年のカーボンニュートラル実現へ向けた早期の市場形成を目指す。当該機は、2022年3月より国内市場に導入している電動マイクロショベル「PC01E-1」の系列拡大機種だ。小規模な土木・建築工事やガス・電気・配管工事などの現場で利用されることの多い現行のマイクロショベル「PC05-1」に、「PC01E-1」と同様に動力源としてHonda Mobile Power Pack e:や電動パワーユニット(eGX)を搭載することで電動化を実現している。

コマツは2023年度を電動化建機の市場導入元年と位置付けており、今回の電動マイクロショベル「PC05E-1」の発売はその第三弾となる。

参考: コマツニュースリリース

PSR 分析: 建機の電動化については、コマツが公式のニュースリリースでも触れている通り、国内にはまだ市場は形成されていない。だがこうしたモデルを他メーカーに先行して市場に投入することで先行者として市場を開拓しようという意図は明らかだ。販売目標は国内50台/年ということで、おそらく多くがレンタル会社に向けた販売になると思うが、現実的な目標値だと評価できる。特徴としてはやはりホンダの交換式バッテリーパックを採用している点だ。これはすでにHondaが電動二輪向けに開発したものであり、容量こそ小さいが、可搬性に優れており、これを採用することで開発コストを抑えられるというメリットもあったはずだ。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

ライドシェア大手のゴジェックが全ての二輪のEV化を発表

インドネシアレポート

インドネシア配車大手のゴジェックは2030年までに全ての二輪車をEVに切り替える。年間販売が500万台を超え、東南アジア最大の二輪車市場であるインドネシアでは今、EVバイクの普及が本格化しつつある。

同国の配車大手、ゴジェックは30年までに全ての二輪車をEVバイクとする計画を掲げる。ゴジェックはバイクや自動車を含めて200万人を超える運転手が登録しているとされ、EVバイクの全量切り替えはインドネシア政府が30年までに900万台のEVバイクを普及させる目標に大きく貢献する見込みだ。

ゴジェックはEVバイクの調達を広げている。「バイクのテスラ」とされるゴゴロと戦略提携を結んだほか、自ら出資してEVバイクメーカーのエレクトラムを立ち上げた。6月下旬、西ジャワ州で新工場の建設を始め、まずは年産25万台とする見込みだ。

出典: 日経

PSR 分析: インドネシアをはじめ、タイやインドネシアにおける二輪市場は非常に大きい。ライドシェアにおいては北米などではUberなどの四輪が主流だが、こと東南アジアにおいては圧倒的に二輪が主流である。圧倒的ともいえる膨大な数の二輪が市中をくまなく走っている。アプリで配車をリクエストしてから実際に到着するまでは3分もかからない。

すでに何度もここで指摘している通り、東南アジアの二輪市場では日系メーカーが優位である。だがこうした電動化の波に対してホンダやヤマハは廉価で現地で支持される価格帯のEVバイクを未だにリリースしていない。電動モデルはすでに発売しているが、高額であったり、リース契約が前提であったり、社会実験を繰り返したりしている。だが市場がこうした大きな変革期にあって従来の日本式の取り組み方では、適切なタイミングを逃すのではないかと筆者は考えている。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

韓国電池3社、大幅増収続く LGエネは営業益2.4倍

韓国レポート

韓国電池大手3社の2023年4〜6月期の連結決算が出そろった。LGエネルギーソリューションの売上高は前年同期比73%増、営業利益は2.4倍だった。EV生産が拡大し、SKオンの売上高は同2.9倍に拡大。サムスンSDIは23%増収だった。

車載電池で世界2位のLGエネの売上高は前年同期比73%増の8兆7740億ウォン(約66億ドル)、営業利益は2.4倍の4610億ウォン(約3.4億ドル)だった。2022年稼働の米GMとの合弁生産も寄与し増収増益を続けた。

LGエネは6月末時点の受注残額が440兆ウォン(約3320億ドル)と、1年間で130兆ウォン(980億ドル)増えたと明かした。ホンダや韓国・現代自動車との合弁契約などで受注を積み上げており、北米中心に新工場を次々と建設して需要増に対応する。

SKオンは売上高が同2.9倍の3兆6961億ウォン(2.7億ドル)と大きく伸びた。後発のSKは活発な先行投資を続けており、当面は赤字基調が続く。

車載電池とスマートフォン向け電池が主力のサムスンSDIの売上高は23%増の5兆8406億ウォン(4.4億ドル)だった。欧州中心に自動車販売が好調で、安定的に販売を伸ばしている。

参考: 日経

PSR 分析: 現在の韓国の製造業は半導体とバッテリーが支えていると言って良い。半導体は減産が続き稼ぐ力の鈍化がみられるが、バッテリーは好調の様子だ。韓国メーカーは北米にも生産拠点を設けるための投資を続けている。北米や欧州の自動車メーカーでの採用が増えており、少なく見積もっても向こう5年以上は韓国バッテリーメーカーの躍進は続くだろう。懸念点としては度々ここで指摘しているが、他のバッテリーメーカーも積極的に生産力向上の投資を続けているため、需要が飽和した場合に価格競争が発生し、過剰な供給能力が足かせになり得る、という点だ。レアメタルを筆頭に原材料の調達も国際間競争の様相を呈していることから将来的に調達が今よりも難しくなる可能性もある。こうした課題を韓国勢がどのように乗り切るか、がキーになる。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト