フォックスコン、ベトナムEV部品生産に2.46億ドル投資へ

ベトナムレポート

台湾の電子製品受託生産大手フォックスコンはベトナム北部クアンニン省の2つの新規プロジェクトに2億4600万ドルを投資する計画について、当局から承認を得た。プロジェクトは子会社のフォックスコン・シンガポールによるもので、通信機器とEV部品の製造・組み立てが中心となる。フォックスコンによるベトナムへの総投資額は約30億ドルに拡大する。新規投資額のうち、EV充電器と部品を生産する工場に2億ドルを投じる。2025年1月から生産開始予定で、従業員は1200人の見込み。

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コマツ、日立、デンヨーが共同で水素混焼発電機を製品化

日本レポート
Akihiro Komuro
小室 明大

コマツと日立製作所、デンヨーは8月8日、水素と軽油を混ぜて燃料に使う発電機を製品化したと発表した。燃焼時にCO2を出さない水素を最大50%混ぜることが可能で、CO2排出量も50%削減できる。コマツの小山工場に初号機を導入し、9月中の本格稼働を目指す。今後は日立を窓口に、広く外販する。

軽油を使うディーゼルエンジンに水素を最大50%まで混ぜられる。出力は250キロワット。コマツが燃料噴射の制御技術、日立が異常燃焼時に安全に停止する機能などをそれぞれ提供し、デンヨーが発電機に組み上げた。日立とデンヨーは2018年から、コマツを加えた3社では2021年から開発を進めてきた。

参考: 日経

PSR 分析: 水素は燃焼速度が非常に速い。高温の特性もあり、温度も高い。NOxがディーゼルと比較してより多く出るという課題もあって、軽油との混焼が難しかった。この発電機は6月に大阪で開催された建機展で展示されていたが、その時はまだ公表前と言うこともあって撮影や記事での紹介が禁じられていた。

発電機の分野でもCO2削減や耐環境性能の向上は要求されているが、最大の課題はコストだ。現時点ではイニシャルコストもランニングコストも既存のディーゼル発電機と比較すると大きく見劣りする。水素の場合は充填する環境の整備もまだまだ不足しており、トライアルでの運用が当面は続くだろう。だが売れないからといって開発を全てストップするわけにはいかない。この分野の推進は、大規模な投資と、数十年に及ぶだろう投資を回収するまでの期間に耐えうるだけの資本力を持つ企業に限られる。そうした意味でこの発電機の開発に参画した3社にかかる期待は大きい。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

現代自動車、中国2工場を売却へ 販売台数は6年で77%減

極東 > 韓国レポート

韓国の現代自動車は6月20日、中国の2工場を売却すると発表した。中国国有自動車大手、北京汽車集団との合弁会社「北京現代」の稼働工場を2カ所に縮小する。中国市場の販売不振で構造改革を求められていた。

現代自の中国販売は2022年に26万台だった。2016年は113万台を販売しており、6年間で77%減少した。CEOは「ここ数年間、中国事業は内外の様々な否定的な要因によって厳しくなった。低下したブランドイメージ向上のために、高性能モデルに注力する」と話した。現代自は残る2工場の生産効率を高め、新興市場への輸出拠点としても活用する。中国市場では販売車種を現在の13種から8種に絞り込み、高級車モデル「ジェネシス」やSUVなど高価格帯の車種を上海市中心に販売していく方針も示した。

参考: 日経

PSR 分析: この状況には多くの背景が絡んでいるが、中国の国内ブランドの品質が年々向上していることはその一因に挙げられるだろう。韓国製や日本製と比べ、同クラスのモデルの中国製は2割程度安く、こうした価格戦略が自国ブランドの躍進と国外ブランドの販売低迷という流れを生んでいる。今後中国市場では更なるコスト競争の激化が予想され、その結果として国外ブランドは今回の現代自のように高級車で中国市場に挑む構図が増えていくと筆者は見ている。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

ホンダ、半導体不足で車の機能絞る SUV納車1年→半年へ

極東 > 日本レポート
Akihiro Komuro
小室 明大

ホンダは新型車の一部で死角に入った車両を検知しドライバーに警告する機能をなくして販売する。この機能に必要な専用の半導体は不足が続いている。受注から納車まで1年程度かかる状況を解消し、半年程度で納車できるように機能を絞って販売する。

SUVの新型車「ZR-V」で、走行中の死角になりやすい斜め後方の車両を検知してドアミラーに表示することでドライバーに注意を促す「ブラインドスポットインフォメーション(BSI)」をなくした仕様で販売を始めた。必要な車載半導体の調達が間に合っておらず、納車までの期間が長期化する見通しとなったため、このBSI機能を搭載せず販売することを決めた。店舗やモデルで異なるが、受注から納車まで1年程度だった期間が半年程度と半分程度に短縮できるという。

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インドネシア、車産業の盟主狙う EVシフトでタイは防戦

東南アジア > インドネシアレポート

世界的なEVシフトの中、インドネシアが新たな盟主の座をうかがう。すでに乗用車生産台数ではタイを抜き、EVの本格生産も先行して始まった。タイは自国生産と販売補助金をセットにしたEV優遇策を打ち出すなど東南アジアの自動車生産ハブの地位死守に動きはじめた。

インドネシア最大の強みが車載電池で使用されるニッケル資源の豊富さだ。世界最大の埋蔵量ともいわれ投資が急増している。同国政府は4月、米Fordが参画するニッケル生産事業への投資について、独VWも参画を検討していることを明らかにした。インドネシア政府はEV振興政策を継続的に打ち出す。4月から、一部のEVにかかる付加価値税を11%から1%に引き下げた。原材料や労働力などの現地調達率が40%以上の車両を対象にし、消費と同時に国内生産を促す狙いだ。ただ、販売店から制度の使い勝手への不満があることから早期の見直しも検討している。政策も機動性を高める構えだ。

政策に呼応し世界大手の動きも活発だ。韓国の現代自動車や中国のSGMWはすでに2022年にインドネシアでのEV生産を始めた。世界で工場用地を探している米テスラにも秋波を送る。韓国のLGエネルギーソリューションは現代自と電池工場を建設中で2024年にも稼働する見通し。車載電池世界最大手の中国・CATLも電池工場を新設する。

「インドネシアに車生産のハブを奪われるかもしれない」。タイの産業政策に関わる関係者は危機感を隠さない。タイは1960年代からトヨタ自動車など日本車メーカーが生産を開始し、日本車の勢力拡大とともにサプライチェーンを含めて産業集積が進んだ。オーストラリアや中東、アフリカなど向けの輸出拠点となってきたが、世界的なEVシフトを背景にエンジン車で培った勝利の方程式が通用しなくなってきた。

タイ政府関係者は、これまでタッグを組んできた日本メーカーについて「動きが遅い」と指摘する。タイでは日本車人気は依然高くEVへの期待も高い。国内でEV普及期を迎えた中、日本車のEV商品化の遅れがタイの産業成長の足かせになる可能性もある。

タイ政府は2030年に新車生産の3割以上をEVとする目標を掲げ、2022年2月に新たな優遇策を打ち出した。最大の柱が将来的に現地生産するメーカーのEVを対象に購入時の補助金を最大15万バーツ(約60万円)支給する政策だ。物品税も乗用車について8%から2%に減税する。世界的に商用や個人向けに人気でいまだにタイが優位のピックアップトラックは免税になる。

タイ政府は2023年から5カ年の投資戦略を発表し、FCVの生産などを対象に10〜13年にわたる免税措置を適用すると明らかにした。バイオ燃料の生産企業も減税の対象になる。トヨタは2022年12月、タイ財閥最大手のCPグループと共同で家畜の排せつ物から発生するバイオガスを活用した水素を製造し、FCVへの利用も検討すると明らかにした。EVだけでなく新エネルギー車全体に手を広げ、先行したい考えだ。

タイとインドネシアの競争は激しさを増す。

出典: 日経

PSR 分析: 東南アジアにおける最大市場であるインドネシアとタイの競争は、東南アジア全体の競争力を後押しすることに繋がる。両国の間には文化的にも大きな違いがあるが、どちらも国内人口の多さと平均年齢の若さがあり、市場としても強い成長が期待できる。特にインドネシアの鉱山資源は世界から注視されており、インドネシアもこれを自覚し、より戦略的な政策を通じて自国の発展を加速させたい考えだ。日本車ブランドと歴史的にも関係が深いタイではこうしたインドネシアの動きの後塵を拝すことなく、今後も成長を続けていけるかが懸念されている。急に産業構造を変えることはできないことから、しばらくは減税で消費者市場をサポートし、補助金で投資を募るというスタンスを続けていくだろう。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

現代自とLGエネ、米国に電池合弁工場 6000億円投資

極東 > 韓国レポート
Akihiro Komuro
小室 明大

韓国の現代自動車グループとLGエネルギーソリューションは5月26日、米国で車載電池の合弁工場を建設すると発表した。総投資額43億ドル(約6000億円)を折半で負担し、2025年末の稼働を目指す。米国のEV補助金の条件が明らかになる中で、現地での投資計画が相次いでいる。

米ジョージア州のブライアン郡に新工場を建設する。生産能力は標準的な年30ギガワット時で、EV約30万台分の電池を供給できる。現代自が建設中のジョージア州のEV専用工場のほか、起亜のジョージア工場と現代自のアラバマ工場にも供給する。重量の大きい車載電池は運送コストがかさむため、3工場に供給しやすい同地に決めた。

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日野自動車と三菱ふそうが経営統合へ

極東 > 日本レポート

突然の発表で、誰も予期できなかった商用車再編となった。5月30日、トヨタ自動車と独ダイムラートラックが商用車分野で提携し、トヨタ傘下の日野自動車とダイムラー傘下の三菱ふそうトラック・バスを2024年末に経営統合することを発表した。

トヨタとダイムラーが株式公開を目指す持ち株会社を2024年末までに設立し、日野自と三菱ふそうが傘下に入ることで4社が基本合意。トヨタとダイムラーの持ち株会社への出資比率は同じ割合とし、統合後に日野自はトヨタの連結子会社から外れる。

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中国・長安汽車、タイにEV新工場 380億円投資

東南アジア > タイレポート

タイ投資委員会(BOI)は20日、中国自動車大手の長安汽車集団がEVなど電動車の新工場をタイに設けると発表した。投資額は98億バーツ(約380億円)で、数年内に竣工するもようだ。当初の生産能力は年10万台で、車載電池なども製造する。タイ政府はEVの現地生産を促す奨励策を設けており、中国EV大手の投資が活発化している。

新工場ではEVのほか、HV、PHVなど電動車を中心に生産する。タイ国内向けに加え、東南アジア諸国やオーストラリア、南アフリカなどにも供給する方針だ。

長安汽車は中国の車大手で4番目の規模を持ち、2022年は200万台以上の新車を販売した。マツダとも合弁企業を設けており、中国で電動車投入を強化している。今後は中国以外でも電動車投入を進める予定で、今回の投資はその一環となる。

タイでは中国EV大手のBYDも東部ラヨーン県に完成車工場を設ける。24年に完成し、乗用車で年15万台の生産を見込む。長城汽車も同年から現地生産を予定する。タイ政府は22年、EV生産を促す奨励制度を導入し、多くの中国の車大手が活用を進める。

出典: 日経

PSR 分析: 中国自動車メーカーの「BIG 5」の1社である」Changan Automobileは複数の海外自動車メーカーと合弁事業を展開している。彼らのタイ進出は、現地における中国勢の存在感をさらに高めることになるだろう。SAIC、BYD、GWMなども進出し、これまで日本勢の牙城であったタイに切り込もうとしている。同スペックでの日本車と中国勢の比較をすればコスト勝負では中国勢が優勢になるだろう。これまでサービス網を広く展開し、アフターサポートを含めた日本ブランドの信頼性が中国勢の攻勢に対してどう立ち回るか、が焦点になる。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

起亜、顧客仕様のEV100万台計画 配送車・タクシー開発

極東 > 韓国レポート

起亜が配送車やタクシーなど特定用途向けを軸にした独自のEV戦略を進める。韓国ネット通販最大手のクーパンと配送車を共同開発するなど、2030年のEV販売目標160万台のうち顧客仕様EVが100万台を占める。ソウル市郊外に専用工場も建設する。

クーパンとは運転手1人の乗車を前提として荷物の積載量を増やし、冷蔵や冷凍の車内設備を備える車両を開発するもようだ。同社は高速配送のために物流センターや配送車を自前で抱え、ドライバーを直接雇用する。将来的に1万台規模のEV配送車を運用する方針を示しており、起亜への発注ロットが大きい。

韓国陸運最大手のCJ大韓通運とも配送トラックの共同開発契約を結んだ。飲食店チェーンなどとも連携して冷蔵配送に適したEVも開発する。まずは国内企業との協業をもとに個別開発・量産のノウハウを蓄積し、米国や欧州など海外の顧客企業からの受注も始める。

起亜はPBV拡大のためのEV専用工場をソウル首都圏の華城市に建設する。既存工場を拡張する形で、6万6千平方メートルの敷地に1兆ウォン(約1000億円)を投じて新工場棟を建てる。23年内に着工して25年下半期には年間15万台のEV生産能力を確保する計画だ。

起亜を含む現代自グループはEVプラットホーム「E-GMP」をEV全車種に適用している。電池を床下に敷き詰める構造で、車の内装の自由度が高い。

現代自グループの22年の世界販売台数は684万台で、そのうち290万台を起亜が担う。現代自の陰に隠れて目立たない起亜だが、日本のスズキと同水準の販売台数で、売上高は9兆円を誇る。韓国と米国、欧州を中心とした効率的なマーケティング戦略で22年の売上高営業利益率は8.4%と現代自(6.9%)を上回る。

参考: 日経

PSR 分析: 起亜が商用車への明確なターゲットを示したことは市場からも好感を持たれているようだ。かつての起亜は小型車が中心だったが、近年はSUVや高級セダンにも注力しており、現代自動車と競合するケースも増えていた。

筆者は商用車の方がEV普及は早く進むのではないかと見ている。コスト意識がより高いからだ。これまで商用車分野では他のメジャーな自動車OEMが力を入れてこなかったという側面もあり、起亜はそこにチャンスを見出そうとしている。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

日立建機、遠隔ショベル2023年度に発売 一般土木現場向け

極東 > 日本レポート
Akihiro Komuro
小室 明大

日立建機は2023年度中に遠隔操作に対応する中型の油圧ショベルを発売する。宅地造成や河川の工事などで、建機に乗り込まずに作業員が操作する。工事現場で人手不足により需要が高まっているとみて、普及台数が多い中型で導入する。

主に車体重量が10〜30トンクラスの油圧ショベルを対象とする。遠隔操縦に対応できる車体を用意し、日立建機が顧客と相談しながら必要な遠隔操作用のコントローラーや映像システムなどを搭載する。

これまで、ゼネコン大手が独自に遠隔操作できるよう油圧ショベルを改造する事例はあった。日立建機は自ら遠隔対応にすることでアフターサービスなどをしやすくする。今後、遠隔操作に加えて自動化に対応する同クラスの油圧ショベルも発売する計画だ。

参考: 日経

PSR 分析: 筆者は世界最大の建機展示会CONEXPO2023を視察してきたが、Trimbleをはじめ多くの遠隔操作システムの展示があった。複数の大型モニタとコックピット、操作用のジョイスティックなどで構成されたシステムを用いて、インターネット経由で遠隔地にある建機を操作する仕組みだ。こうしたシステムは通信大手が開発を主導し、建機メーカーへの導入を狙ったものが多かった印象がある。

今回日立建機はこうしたシステムを自社のサービスとして顧客に提供する。人手不足が深刻な現場ではこうした省力化に貢献する仕組みは需要が高い。無人化は建機業界にとっては究極の目標だが、まずはこうした遠隔操作システムによって、複数の現場を1か所から運用することが第一歩になるだろう。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト