井関農機、国内最大級の無人運転トラクター 有人監視型

極東 > 日本レポート
Akihiro Komuro
小室 明大

井関農機は人の監視のもと操縦者なしで作業する無人運転トラクターを開発したと発表した。国内最大級となる123馬力を実現し、農業の大規模化が進むなか農作業の省力化を支援する。価格は2190万円からで、北海道を中心にした大規模生産者向けに販売する。

同社の有人監視型のロボットトラクターはこれまで98馬力が最大だった。123馬力まで馬力を向上させることで、作業幅が広がったほか、作業時間も短縮した。操縦に慣れていない農家の訓練にかかる時間も短くなり、効率的な作業ができるようになるという。

参考: 日経

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クボタ、燃料電池トラクター初公開 自動運転化も検討

日本レポート
Akihiro Komuro
小室 明大

クボタは3月28日、燃料電池を動力源とするトラクターの試作機を初めて公開した。発売時期は未定だが、無人の自動運転トラクターに燃料電池を搭載することも検討する。クボタはバッテリー充電式の農機も開発しているが、中・大型の農機では水素を使う燃料電池が有効だとみている。脱炭素の流れで日本や欧米など先進国で需要が生まれるとみて、実用化を急ぐ。試作機は60馬力ほどで、キャビン上部にトヨタ自動車の燃料電池車「ミライ」に使われる水素タンクを3本設置した。水素と酸素を反応させて発電し、モーターに電力を供給する。実験ではトラクターに耕運用の作業ユニットを装着して土を耕した。

農機は乗用車に比べ稼働時間が長く、作業によっては大きなパワーが必要だ。クボタは中・小型の農機ではバッテリー充電式でエネルギーを確保できるとみているが、中・大型の農機ではバッテリーが重くなりすぎる可能性があるため、燃料電池が有効だとみる。水素エンジンの活用も含め、「全方位戦略」で農機の脱炭素化を進める。

トラクター上部のタンクに水素を充塡するデモも実施した。10分間で約7.8キログラムの水素を充塡することで、4時間程度の走行が可能になるという。試作機はディーゼルエンジンで動く従来式に比べ、騒音を約3分の1に抑えられる。夜間でも作業できるほか、運転室の振動も少なく、農家の負担軽減につながるとみている。

参考: 日経

PSR 分析: 燃料電池駆動の機械開発は、各業界のリーディングOEMによって進められている。農業機械セグメントにおいてはクボタがいち早く積極的に取り組んでいる。クボタは日本での水素普及を目指す団体「水素バリューチェーン推進協議会」に、トヨタや川崎重工業、神戸製鋼や東芝が名を連ねる25社の理事会員の1社として参画している。

現実的に考えると水素、燃料電池の本格的な普及には課題が多い。機器側が燃料電池を搭載しても、水素を生み出す過程でCO2が発生してしまうのでは実際にCO2削減効果は限られたものになってしまう。現状農機ではディーゼルエンジンがまだまだ主流であり、軽油と同等の調達のしやすさなども当然求められるため、サプライチェーンの構築も不可欠だ。コストもこれ以上の燃料負担を農家に求めるのは酷な話だろう。

こうした課題解決の困難さを考慮すると、燃料電池の本格的な普及にはまだ数十年単位の長い時間を要するだろう。だが、そのための先行投資として、現在行われている開発が後々に極めて有意義なものだと評価されるかどうかは、歴史の回答を待つほかにない。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

クボタ、電動農機用バッテリーを自社生産にする方針

日本レポート

クボタは電動農機向けバッテリーの自社生産を検討している。バッテリーを自社で開発・設計し、国内での新工場建設も視野に入れている。彼らは2030年までに電動トラクターや草刈り機を欧米に投入する方針だ。電動農機の駆動時間を左右するバッテリーを自社で生産する体制を整えて、欧米などでの需要増に備える。クボタは現在、農機のディーゼルエンジンを主にタイと日本で製造し、米国や欧州に運んで最終製品を組み立てている。電動農機の主要部品であるバッテリーについて北尾社長は、「エンジンと同様、アジア向けをタイ、日本や欧米向けは国内で生産できるようにしたい」と話した。

クボタは2023年4月に欧州で電動トラクターのレンタルを始めた。現在は既存工場の空きスペースでバッテリーを含めた製品を組み立てている。農機のバッテリーは独自の冷却方式が必要になるため、北尾社長は「バッテリーセルは外部から調達するが、全体の設計や開発は我々が担う」と説明した。需要にあわせて国内にバッテリー専用工場の建設も検討する。

参考: 日経

PSR 分析: クボタは台湾のバッテリーシステム開発のスタートアップ企業にすでに出資するなど、電動化に向けた動きを進めている。バッテリー製造を自社で行うという戦略は他の農機OEMでは見られない戦略であり、クボタの事業規模があるからこそ検討できる。

だがその一方で農機の電動化自体には大きな障壁がある。そもそもディーゼルエンジンの特性が農機には最適であり、EV化は難しいという見方が大勢なのが実情だ。率直に言って今日の時点では純粋な電動農機の需要は存在しないともいえる。自動車分野でもBEVへの見方は変わりつつある。2022年くらいまではBEVこそがメインストリームだという論調ばかりだったが、2023年ごろから、LCA(ライフサイクルアセスメント)の観点から、果たしてBEVが最適なのか、という議論が出てきている。こうした様々な意見がある中で、農機OEMが電動化の主導的な役割を担えるかどうか、それが市場をどのように変えるのか、変わらないのか。考えていく必要がある。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

タイ・クボタの危機感、人手確保へ施策

東南アジア > タイレポート
Akihiro Komuro
小室 明大

東南アジア屈指の工業国タイでは労働人口の先細りで、製造業で自動化が加速している。働き手の意識も変わり、東南アジアから日本への出稼ぎも減る。安価な労働力を前提にした事業モデルはアジアで通用しなくなりつつある。

農業機械大手クボタの現地法人サイアムクボタのアマタシティ工場を訪れると、数え切れないほどの自動搬送車(AGV)が縦横無尽に走り回っていた。COVID-19禍で職を失い、故郷に帰って就農する人々への支援策として、政府が農機導入への補助政策を打ち出したことによる特需もあって、トラクターやコンバインの販売は好調。その果実を年末の賞与という形で還元できていることから、サイアムクボタは現時点で人手不足には見舞われていないという。それでも、5年後、10年後には製造業の現場で人手を確保するのは相当厳しくなるだろうという危機感は強い。工場勤務につきまとう「きつい、汚い、危険」のイメージを払拭しようと、将来を見据えた手を着々と打ち始めている。大量のAGVはその表れだ。

タイでは少子高齢化が進行しており、同国政府が2022年5月に示した見通しによれば、総人口は28年の6719万人をピークに減少に転じる見通しだ。製造業の現場では将来の人手不足への備えが始まっている。

出典: 日経

PSR 分析: 現地の製造業の現場では、福利厚生の充実を図り、自動化への設備投資がすすめられている。給与水準があがり、より良い収入を求めて海外に労働力が流出することを抑止しようとしているようだ。今後さらに現地の製造業が発展するためには労働力の確保は極めて重要であり、その意味でこの方向性は正しい。製造現場での自動化はタイをはじめインドネシアなどの東南アジアでも高い需要がある。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト