クボタ、電動農機用バッテリーを自社生産にする方針
日本レポート
クボタは電動農機向けバッテリーの自社生産を検討している。バッテリーを自社で開発・設計し、国内での新工場建設も視野に入れている。彼らは2030年までに電動トラクターや草刈り機を欧米に投入する方針だ。電動農機の駆動時間を左右するバッテリーを自社で生産する体制を整えて、欧米などでの需要増に備える。クボタは現在、農機のディーゼルエンジンを主にタイと日本で製造し、米国や欧州に運んで最終製品を組み立てている。電動農機の主要部品であるバッテリーについて北尾社長は、「エンジンと同様、アジア向けをタイ、日本や欧米向けは国内で生産できるようにしたい」と話した。
クボタは2023年4月に欧州で電動トラクターのレンタルを始めた。現在は既存工場の空きスペースでバッテリーを含めた製品を組み立てている。農機のバッテリーは独自の冷却方式が必要になるため、北尾社長は「バッテリーセルは外部から調達するが、全体の設計や開発は我々が担う」と説明した。需要にあわせて国内にバッテリー専用工場の建設も検討する。
参考: 日経
PSR 分析: クボタは台湾のバッテリーシステム開発のスタートアップ企業にすでに出資するなど、電動化に向けた動きを進めている。バッテリー製造を自社で行うという戦略は他の農機OEMでは見られない戦略であり、クボタの事業規模があるからこそ検討できる。
だがその一方で農機の電動化自体には大きな障壁がある。そもそもディーゼルエンジンの特性が農機には最適であり、EV化は難しいという見方が大勢なのが実情だ。率直に言って今日の時点では純粋な電動農機の需要は存在しないともいえる。自動車分野でもBEVへの見方は変わりつつある。2022年くらいまではBEVこそがメインストリームだという論調ばかりだったが、2023年ごろから、LCA(ライフサイクルアセスメント)の観点から、果たしてBEVが最適なのか、という議論が出てきている。こうした様々な意見がある中で、農機OEMが電動化の主導的な役割を担えるかどうか、それが市場をどのように変えるのか、変わらないのか。考えていく必要がある。PSR
小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト