中国の車設備企業、タイにEVバイク工場 420億円投資

タイレポート

タイ東部の経済特区「東部経済回廊(EEC)」の事務局は7日、自動車設備などを手がける中国の蘇州瀚川智能科技がタイに電動二輪(EVバイク)の新工場を設けると発表した。2028年までに総額100億バーツ(約420億円)を投じ、年15万台の生産能力を確保する。

瀚川智能の幹部がEEC事務局との会談で明らかにした。EEC域内にあるタイ東部チョンブリ県の産業団地に工場を建設し、EVバイクの組み立て、交換式電池や充電設備の製造などを始める。稼働時期は明らかにしていない。

瀚川智能は07年に創業。自動車業界向けの生産設備などを手がけており、中国の大手自動車メーカーや部品メーカーと取引がある。上海証券取引所のハイテク新興企業向け市場「科創板」に上場しており、22年12月期の売上高は前の期比51%増の11億4280万元(約240億円)、純利益は同21%増の約7351万元だった。

足元でタイの新車販売に占めるEVバイクの比率は高くないが、政府は23年11月時点でEVバイクの購入代金を最大1万8000バーツ支給するなどして市場拡大を図っている。国営エネルギー大手のタイ石油公社(PTT)が8月、台湾二輪大手の光陽工業(キムコ)とEVバイクの生産に乗り出すと発表するなど動きが活発化している。

出典: 日経

PSR 分析: 東南アジア上記の記事でも触れられているようにタイにおけるEVバイクの普及はまだまだこれからという状況だが、この時点で年産15万台規模の生産設備への投資額は非常に大きい。これは単なるタイ市場に留まらず、近隣諸国への輸出をも視野に入れているのではないかと筆者は予測する。

中国で発表される投資プロジェクトと、現実的に遂行されるプロジェクトのディテールに乖離があるケースは多いため、実際にこれらがどのように進められていくのかはチェックが必要だが、いずれにしろ、現時点で世界最大のEVバイクの生産能力を持つ中国が、世界最大の市場のひとつである東南アジアのバイク市場に目を向けるのはごく自然な流れだろう。過去にもエンジンモデルで中国OEMが東南アジアへの市場参入を試みた際には、品質的に大きな問題がありうまくいかなかった。四輪とともに日系OEMの牙城ともいえるタイ二輪市場で中国メーカーがどう立ち振る舞うか注視していく。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト