東南アジア全体レポート

東南アジアの新車販売台数に順位変動が起きている。2023年はマレーシアがタイを抜き2位に浮上した。フィリピンもベトナムを追い越し4位に付ける。金利上昇によるマイナス影響を、税優遇などで緩和出来たかが各国の明暗を分けた。EVではタイを中心に地域全体で販売増が続いている。

インドネシアやタイなど東南アジア主要6カ国の新車販売台数をまとめた結果、2023年は全体で334万台と前の年に比べ2%減だった。減少は3年ぶり。市場の重荷となったのは金利の上昇だ。東南アジアでは自己資本の少ない顧客が自動車ローンで購入するケースが多く、借入金利の上昇や審査の厳格化が影響した。

逆風下でも販売を拡大したのがマレーシアとフィリピンだ。マレーシアは11%増の79万台と過去最多を更新し、域内2位に初めて浮上した。景気刺激策で国内生産車を対象に売上税の減免措置を実施したことが追い風となった。

2023年の個人消費の伸び率は前年比4.7%と堅調で、市場拡大につながった。シェア首位の国民車メーカー・プロドゥアは17%増。セダン車などが好調だった。同じく国民車メーカーでシェア2位のプロトンも11%増だった。

フィリピンは人口増を追い風に内需が拡大し、20%増の41万台と4位に浮上した。同国の実質国内総生産(GDP)の伸びは23年に5.6%と高く、半導体不足の影響の緩和も販売台数を引き上げた。

出典: 日経

PSR 分析: 東南アジアの自動車市場の変化は著しい。タイとインドネシアが2強だったが、マレーシアがタイを抜いたというこの報道は大きな驚きだ。

シンプルに説明すると、マレーシアは助成金によって販売を伸ばし、タイはローン審査を厳格化したことが販売のブレーキになった、ということだ。特にマレーシアは自国の自動車ブランドを持つことに熱意を持っており、歴史的にも自読の自動車産業を成長させるために積極的である。政策金利の影響が大きく出る市場であるため、今後もしばらくは金利が高止まりすると予測されている中では、タイが販売台数を急速に回復させることは期待しにくい。ベトナムでも同様に金利が販売の足かせになっている。EVはどの国でも徐々に伸びているが、市場全体の停滞の長期化が懸念される。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト