日本レポート

4月23日、コマツは水素を燃料とする発電機を開発したと発表した。電動ミニショベルの給電に使う。作業現場まで持ち運べて、電力のインフラがない場所でも電動建設機械を使えるようになる。発電時に排出するCO2を最大40%削減し、建設現場の脱炭素につなげる。2024年9月までに顧客の現場で実証実験する。デンヨーが協力して開発した。発電機の大きさは長さ3.1メートル、幅1.1メートル、高さ1.7メートル。軽油に水素を最大40%混ぜて発電する。廃食油などを使ったバイオ燃料の一種「HVO燃料(水素化植物油)」も使える。
水素混焼発電機については、コマツはこれまで工場の自家発電などに使う設置式を開発してきた。同社は7種類の電動建機を扱っているが、配電網が整備されていない現場には電力を届けられず、電力供給インフラの製品化を進めていた。
参考: 日経
PSR 分析: 電動建機の運用時間の短さは大きな課題であり、工事現場ではディーゼル発電機を持ち込み、バッテリーを充電しながら運用するケースが多い。こうした現状ではCO2の削減という本来の目的を達成することは難しい。
水素やHVO燃料で使用できる発電機でもCO2をゼロにすることは出来ないが、こうした現状から進歩する過程であるといえる。今後さらにこうした機器が市場投入されることで使用されるシーンが増えていくことが期待される。
今後、建設現場での水素活用の課題は大きく3つある。ひとつは水素の供給拠点を増やすことだ。現時点では水素を充填できる場所はガソリンスタンドと比較するととても少ない。これはコマツ単独で解決できる状況ではない。法的整備も含めた長期的な計画が必要だ。
ふたつ目は水素生成時のCO2だ。現時点では水や大気から生成できる水素の量は限られており、まだまだ実験レベルだ。今日、様々な業界で使用されている水素のほとんどは燃焼によって生成されており、水素生成時にCO2が大量に排出されている。クリーンなエネルギーとして水素が評価されているのはあくまで水素燃焼時のCO2排出の側面だけから語られており、水素自体を生成する際のCO2も今後は考慮されていく。
3つ目はコストだ。軽油と比較するとどうしても水素のコストは割高になる。価格競争力を持ってはじめて普及のステージが始まる。
これらの課題はどれも解決に多大な努力と時間が必要なものばかりで、実際に本格的な普及はまだまだ遠い先になる。だがこうした製品の開発の努力は継続されるべきで、そのような取り組みをできるメーカーは限られている。今後建機の世界で水素がどれだけ活用されていくのか、コマツが担う役割は大きい。PSR
小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト