日本レポート
Akihiro Komuro
小室 明大

トヨタ自動車と千代田化工建設は水素製造システムを共同開発すると発表した。両社の技術を組み合わせ、水素製造装置を小型化し効率性を高める。2025年度からトヨタの本社工場で実証実験を始める計画で、2027年度ごろからシステムを外販したい考えだ。

新システムでは水を電気分解して水素を生み出す。出力は約5メガワットで、1時間当たり約100キログラムの水素を製造することができる。設置面積は幅6メートル、奥行き2.5メートルで、一般的な設備に比べ約半分の大きさに抑えた。複数の設備を連結させることで、製造量を大幅に増やすことも可能だという。

トヨタのFCV、MIRAIのFCシステム部品を流用することで、コストの低減を目指す。実証では、製造した水素をトヨタ工場内の設備で利用する予定だ。

参考: 日経

PSR 分析: 水を電気分解して水素を生み出して、それをモビリティの駆動力に使うことができれば、水をガソリンのように使用できるかもしれない。また、中東に大きく依存してきた石油を代替できる可能性もある。そんな夢のような話はもちろんすぐには実現できないが、FCVの開発で実績を持つトヨタと、水素エネルギープラントの実績を持つ千代田化工の共同事業は注目に値する。この発表で語られているシステムはモビリティに搭載できる大きさではなく、トヨタの工場内で使用されるとのことだが、それでも将来的なモビリティへの技術利用の可能性はあるだろう。BEV戦略の見直しがグローバルでトレンドになりつつあるなか、ハイブリッドを筆頭に水素などの新燃料の価値が見直されている。トヨタの会長は何年も前から「敵はエンジンではなくCO2である」と説明し、エンジン、バッテリー、PHEV、FCVと、全方向に投資を続けてきた。もちろん水素に否定的な意見も多くあるだろうが、現時点で水素が利用し得るか否かを判断できるステージには立っていないと筆者は考える。こうした事業の予算は限られており、そうした意味で日本最大の企業であるトヨタが行うことは理にかなっている。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト