タイレポート
Akihiro Komuro
小室 明大

タイ政府は1月19日、大規模なリチウム鉱床が見つかったと発表した。埋蔵量は約1500万トンで、ボリビアとアルゼンチンに次ぎ世界3位規模となる。鉱床は南部パンガー県内の2か所で見つかり、推定埋蔵量は1480万トンだと明らかにした。ただし、「発見した資源のうちどれだけ利用できるか調査中だ。判明には時間がかかる」と説明している。タイは従来型の車の組み立てで培った経験を生かし、東南アジアにおけるEV生産の中心地になることに意欲を示しており、今回のリチウム鉱床の発見は、その目標達成に向け弾みをつけるものとなる。

出典: AFPBB

PSR 分析: ピックアップトラックの輸出基地としての地位を守ってきたタイと、2.7 億人の国内市場を有するインドネシアは、東南アジアの自動車産業における 2大生産国である。自動車産業の変革に対応すべく、両国では様々な政策を導入して投資誘致や国内企業の育成に努めている。

2014 年以降はインドネシアの販売台数がタイを上回ることが多い。インドネシアはニッケルの産出量が多く、重要な戦略資源を国内に保有していることも強みだ。そうしたインドネシアとの競争という意味で、このニュースがタイの自動車産業にとってポジティブなニュースであることは明らかだ。

だが、まだ鉱床が発見されたと報じられただけで、それらがどのようにタイの経済に影響を与えるかは未知数である。だが、この200万トンと推計される規模のリチウムの多くがバッテリーの材料として使用できるとなれば、リチウムをめぐる獲得競争の勢力図は大きく変わるだろう。当然タイ政府はこの資源を有効に活用することを検討するが、リチウム採掘には環境汚染のリスクもある。当然外資は鉱山の開発や買収を検討するだろう。リチウムの使用量が少ない電池の開発も進められており、需要が減る可能性もある。今後どうなるかはまだまだ分からないが、この鉱床がタイ経済やグローバルのEVシフトに対してどのような影響を与えるかは注視しなくてはならない。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト